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学術的な興味

最初の問題

この分子生物学の時代にどうして化石を研究するのか
いまだかつて地球上に存在した動物・植物の種の殆どはとうの昔に絶滅しています。そしてそれらが曲がりなりにも存在したといえる証拠は化石にのみ見出だすことが出来ます(運よく化石として保存されていればの話ですが・・・)。絶滅してしまった動物を研究する科学というものは大変難しいものです。つまり、化石に保存されている限られた情報を最大限に活かして、それらの生物が実際に生きていたときにはどのような生物であったかについて、科学的にどこまで何が言えるのかを追求して行かねばならないのです。というわけで、古生物学というのはいろいろな科学的分野から得られる最新の知識を総動員してかからねばならぬ大変複雑な科学なのです。

また、化石記録は生物進化の唯一の直接的証拠です。確かに、化石に残る情報量は大変少ないのですが、化石は進化生物学者に第4の次元、すなわち時間軸を与えてくれます。古生物学・現生生物学の両方から得られるデータはともに重要であり、片方を否定するのではなく両方を活かして行くことこそ、進化生物学者の取るべき道筋だと信じます。

骨組み・題材

動物の形態を機能・発生・系統学的に理解する
動物の形態は進化を通して変化します。そういった変化は、その動物の先祖がどのような形をしていたのか(系統的制約)、その動物の身体の一部一部がどのように発生するのか(発生的制約)、そしてその動物の身体の各部分は外環境とどのような物理的関係に置かれる(機能的制約)に左右されます。脊椎動物の進化を理解する際に、これらの各要因がどのような影響を与えたかを理解するのは大変重要なことです。私はとくに絶滅した海生爬虫類の1グループ(魚竜類)を例に取り、これらの要因を理解しようとしています。具体例としてはMotani (1999)をご覧下さい。魚竜類の鰭脚の進化についての研究例です。

水生環境への二次的適応
陸生脊椎動物のいろいろな系統から、二次的に水の中に棲むようになった子孫が進化しました(例えば、陸生哺乳類の mesonychids から鯨類が進化しました)。何故二次的かというと、全ての陸生脊椎動物は水生の先祖(肉鰭類の”魚”)から進化したからです。Carroll (1985) によると、双弓類だけで少なくとも7つの系統から二次的に水生な子孫が出現ました。これらの系統はそれぞれ独自のやり方で水中生活に適応したのですが、先に述べた3つの制約の影響もあり、それらの適応には多くの共通点が見られます。

魚竜類
私のこれまでの研究は、おもに魚竜類から得られたデータを基に行なって来ました。魚竜類は恐竜類が陸上を歩いていた頃に海中を泳いでいた爬虫類の一群です。この高貴なる爬虫類の一群は、トカゲのような形をした先祖から進化したにもかかわらず、まるで魚のような外形をしていました。全く驚くべきことです。これらの魅力的な動物についてもっと知りたい方は、 Ichthyosaur Page を参照して下さい。

非哺乳類脊椎動物、特に双弓類の系統
脊椎動物の系統学は大変興味深い分野ですが、双弓類基幹部の系統は今特に面白くなっています。魚竜類を含め、いろいろなグループが Sauria と呼ばれる分岐群に含まれるのかどうかが論点となっています。

方法論の幾つか

化石の変形
化石というものは、地中に保存されている間に多少なりとも変形してしまうものですが、多くの場合研究に差しつかえるほどには変形しません。しかし、変形を考慮しなかったために学者が間違いをおかしてしまうこともあるのです。そこで、化石の変形によって自分がだまされていないかどうか、常に気を付けている必要があります。ある程度の条件が満たされれば変形前の形を復元する事は不可能ではなく、古生物学者は1940年代からそういった試みをして来ました。もっと詳しく知りたい方はMotani (1997d)を参照して下さい。

相対成長の式
相対成長の標準式が置く仮定の中に、比べられる2つの構造は同時に発生を始める、というものがあります。しかし、身体の部分によっては、個体の発生が始まってからかなり経って出現するものもあり、骨(特に手根骨)などはそのよい例です。この仮定が崩れることによってどのような影響があるのかに私は興味を持っています。もっと詳しく知りたい方はMotani and You (1998b)をご覧下さい。

系統学的手法
系統の復元は難題であり、解析を行なう際には気を付けても気を付け過ぎることはありません。手法だけでも何種類もあり、それらはままにして異なった哲学的構造に立脚しています。形態学的データは最節約法という手法で解析するのが一般的ですが、この手法を使う立場としては、どのような短所があるのかを的確に認識していたいものです。私が以前抱いた疑問の一つに、もし仮に本当の祖先がデータ中に含まれていたとしたら、それはどのような影響を与えるのか、というものがありました(1995年のアブストラクを見る).

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